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No.3 炭焼きがエコ暮らしの救世主に

山間地の維持管理ではじめた炭焼きがエコ暮らしの救世主に..

木田勝巳さん
(昭和22年3月21日生まれ平成20年9月現在満61歳) 取材日2008年9月6日
木田さんは、元JA職員。JA勤務のかたわら父親と稲作・畜産・椎茸栽培等を営んでいた。昭和62年退職を機ににんにく栽培に挑戦したが、青森産や香川産のような立派なニンニクができずにやむなく断念。しばらくは従来からの酪農と和牛飼育に専念した。その頃はじめたのが山間地にあった自家の農地の維持管理のためにもなると考えた炭焼きであった。以来20年炭焼きを続けている。

先日は鮎原下農地水環境保全隊の生態観察会にご協力いただきましてありがとうございました。炭焼き小屋に子ども達が見学に来るようなことは今までございましたか?

問い合わせはありましたが、整備が不十分で実現しませんでした。

それでははじめての子供たちの見学だったわけですね。どんな印象を持ちましたか?

20年前に炭焼きを始めた当初は、変なことをしてるなというような目で見られていましたが、最近は炭の価値が見直されてきて各方面から注目されるようになりました。そんな中環境教育の観点からも小学生や幼稚園の皆さんに体験してもらえればよいなという気持ちがありましたので、その第1歩として今回の見学が実現しうれしく思っています。

さて炭焼きを始めた当初の話をお聞かせください。

はじめた当初は商品価値のある炭がなかなか焼けなかった。まさに失敗の連続でした。最初に取り組んだ炭は雑木中心でした。雑木を自分で切り出して自前の窯で焼きました。当時はあまりいい炭ではありませんでしたが、バーベキュー用として出荷できました。

最初から商品となったわけですね。

お蔭様で最初から捨てた炭はありません。炭焼きをはじめた当初から卸業者がついてくれたのも幸運でした。

当初、窯の作り方はどうして教わったのですか?

地元の年配の経験者に土窯の作り方を指導してもらいました。

木田さんの炭焼き小屋の土窯

販売ルートとしては卸販売が中心ですか?

卸販売も続けていますが、直販もしています。主に産直の物販所等で販売しています。

卸と直販の割合はどれ位ですか。

ほぼ50:50です。卸は雑木の炭が中心で、直販は竹炭やウバメガシの備長炭を中心に販売しています。

木田さんの炭がほしいと思ったらどこで買えますか?

主に淡路島各地の朝市で販売しています。それから洲本市内の健康食品の店「夢ひろば」でも購入できます。また南あわじ市にある淡路ファームパーク イングランドの丘の入口にある産直でも購入できます。

生産者の表示はどうされていますか?木田さんの個人名ですか?

三友商事というブランド名で販売しています。炭焼きをして販売を始めた当初三人の友人ではじめたからです。法人にはしていません。私は三友商事代表という立場です。

島外では販売されてないのですか?

量が足りないのでほとんどは島内で販売しています。島外の方には、時折わざわざ買いにきてくださった方にお分けする程度です。

朝市・産直等で購入できるのはどんな種類の炭ですか?

販売スペースの関係もあり、竹炭のみです。

平成元年頃から炭焼きと販売を始められたということで、ちょうど20年が経過しましたね。

当初はバーベキュー用といった使われ方が多かったのですが、10年が経過した頃から竹炭を始めました。丁度エコが注目され始めた頃です。

竹炭はどんな使われ方をしていますか?

水の浄化や空気の浄化という観点で使われています。部屋の中の化学物質を吸収できるということから、部屋のインテリアの一部としても使われています。商品の展開も水や空気の浄化を意識したものが多いです。

竹炭を焼こうとするとどれ位の竹と日数が必要ですか?

一窯に2トン車2台分の竹を入れて、炭収は僅か600kgほどです。炭を焼き始めて3日ほど火をいれます。その後空気を遮断して4日ほどかかります。焼きあがった炭の中には良品というか秀品もあれば割れたものもあります。秀品は原形のまま浄化用として販売し、形が崩れたものは粉砕して農地に還元したり、床下の調湿剤として使います。

床下の調湿剤といいますと?

割れた不良品などを粉砕して床下にいれます。炭は湿気が多いときは水分を吸ってくれて、乾燥している時は吸っている水分を放出してくれるんです。湿気の多い日本家屋に最適です。

面白い使い方ですね。どんなキッカケで利用されるようになったのですか?

最初は奈良県のお医者さんに使っていただきました。建坪100坪ほどの自宅を新築する際に、建物の基礎部分に直径1m、深さ1m50cmの円筒状の穴を25個ほど掘って、竹炭と備長炭を複合して投入しました。このお医者さんは電磁波も研究されている方で、調湿効果だけではなく有害な電磁波も遮断するということで炭を使いました。その後はクチコミで調湿剤として何度も床下に使われるようになりました。

床下調湿剤としてのコストは?

一坪に8リットルの袋10袋が必要です。1袋1000円前後で販売しているので、坪当たり1万円ほど必要になります。施工方法もコンクリートのベタ基礎に袋を並べるだけですので簡単です。

粉砕した炭を農地に還元するというのはどんな使い方ですか?

5月の田植え前に田んぼに鋤きこむのです。床下にいれる場合は粒が大きいが田んぼに入れる場合は粒を小さくします。

最近炭が高騰していると聞きますが?

それは原材料が少ないから。備長炭が特に不足している。一時は国内で消費される備長炭 の大半を中国に頼っていた。日本の業者が中国へ行って炭の焼き方を教えて逆輸入のような形で流通していたが、中国から日本への炭の輸出が禁止になってからは安価な備長炭が手に入らなくなった。

国内の備長炭の産地といえば?

和歌山。高知。北日本ではウバメガシが生育しない。ウバメガシでないと備長炭にはならない。

淡路島もウバメガシが多いですが最近はどうでしょう?

昔は多かったが、乱伐で禿山になってしまったところもあり水害のもとになったりして問題になった。竹の場合はたけのこが出て3年で切り出しできるまでになるが、ウバメガシの場合は芽が出てから20年はかかる。山林の保護のことも考えるとウバメガシがあるから切り出せばよいというものでもない。

さて最後に将来の夢をお聞きしたいと思います。

後継者もいないのであまり大きな夢は持っていません。竹林の荒廃を防ぐためにも、竹炭作りで竹の有効利用ができればよいなと思っています。

竹酢液も販売

増え続ける竹を集めて木田さんに焼いてもらうといった展開は可能ですか?

可能ですが竹炭の材料として重宝されるのは孟宗竹。鮎原下集落の竹林を見渡すと破竹と真竹が多いと思います。破竹と真竹は粉砕しか利用価値がない。孟宗竹は肉厚なので、水分の吸収量も多いので利用価値が高い。孟宗竹であれば運搬しやすいところから切り出して利用できます。 なにしろ、運搬や切り出しに人件費をかけることはできないのでアクセスを優先します。運搬しやすい場所であれば「孟宗竹が増えて困っているから切り出してほしい」と依頼いただいた場合、切り出した竹を原料として提供いただくだけでコストは一切かかりません。

実際、竹を切ってくれと言う依頼は多いのですか?

そこそこあるのですが、依頼があった分を全て切り出して炭焼きしても、それだけの炭を売りさばく販路が無いのです。販路が確保できれば焼ける。1ヶ月に一窯は可能です。

下集落全体で竹林の整備に乗り出そうという話になった時にはご協力願えますか?

地元のことだから協力しますよ。例えば焼いた炭を地元の相原川に伏せて水を浄化するなどすればよい。それが環境保全につながれば面白い。もちろん商品にもなりますよ。

炭焼きで食っていけますか?

それは無理やな(笑)。農業の傍ら、小遣い儲けくらいになればなぁと思っています。

平成20年度生態観察会レポート

2008年7月13日の日曜日鮎原下集落の第2回生態観察会が開催されました。

今回は国立公園成ヶ島を守る会理事で自然公園指導員の生嶋史朗先生をガイド役にお迎えし盛大に開催されました。

午後1時にスタートした観察会では、保全隊代表の木田一也(きだかずや)の挨拶の後、町内会長、洲本市役所農政課の巽様等の挨拶の後、簡単なコース説明を行い、いよいよフィールドに出る事になりました。

下集落の集会所(安心コミュニティプラザ)を13時20分頃出発、集会所から藤兵衛谷池方面に向かって集落内の農道を南下します。

歩き始めて間もなく生嶋先生が、道端のアゼクサに立ち止まり、植物の説明をしてくださいました。詳しい説明に子供よりも、大人の皆さんが目を輝かせながら説明に聞き入っておられます。このへんが生嶋先生のすばらしいところ。人懐っこい説明でどんどん参加者を引き付けていきます。

農道脇の水田に立ち寄って、田んぼの雑草の観察です。いろいろな種類の雑草を見つけ、「この田んぼは観察会向きですね」との先生の発言に、日頃から草取りに忙しい農家の皆さんの苦笑を誘っていました。

13時30分過ぎ、道端の植物の説明を聞きながら、最初のため池(藤兵衛谷池)に到着。ここでため池の生き物や植物の観察を行いました。子供たちのお目当てはアゼクサや田んぼの雑草よりも、ため池の生き物のようで先生が網ですくった生き物を身を乗り出して観察していました。

さあ、この当たりで天気に恵まれすぎたせいか、額のあたりにじっとりと汗が。熱中症対策のためにも参加者のみなさんに休憩と水分補給をしていただこうと、次の観察ポイントの「クワイ池」の堤に休憩所を用意しました。パラソルを何本か立て、冷たいお茶を用意した簡単な休憩所でしたが、役員の心配りに参加者のみなさんも喜んでくださいました。

しばらく休憩し、今回の観察コースの難所?とも言える山深い水路脇の道へ入っていきます。このような水路を管理するための道は昔はよく使われましたが、今はあまり歩くことがなく、大人の方は懐かしそうに、子供たちはちょっと緊張して山間にはいっていきました。この部分も役員総出で事前に観察しやすいように整備させていただきました。

ただ上の写真にも見えていますが、観察コースの畔草がきれいに刈られています。これはこの辺りの田んぼの所有者が草を刈っていただいたのですが、事前の調査ではこのあたりは貴重なアゼクサがあった部分なのですが役員の連絡不足できれいに刈り取られてしまったのです。ちょっと観察の材料が減ってしまって残念ではあるのですが、考えてみるとこのように保全管理が行き届いているからこそ貴重なアゼクサが生育するのです。もし管理されていなかったら人もはいりこめない林になるだけです。お百姓さんに感謝!感謝!!

 

午後2時前、今回の観察コースのハイライト?木田勝巳さんの炭焼き小屋に到着です。木田さんは約20年前から鮎原下集落のこの場所で炭焼きをしておられ、ウバメガシの炭や竹炭を販売しておられます。山深い場所にありますので人が入ることは少なく、ましてこの日は集落の子供たちや父兄おまけにケーブルテレビまでと静かな炭焼き小屋が急ににぎやかになりました。炭の焼き方などを丁寧にお話いただいた後、なんと子供たちに竹炭のおみやげまで用意してくださいました。木田さんありがとうございます。

 

炭焼き小屋の見学も終わり、今回の観察コースで一番標高の高い山道を通過します。この道、実は現在はまったく使われていませんでした。上の写真をみるとりっぱな林道のようですが、1週間前までは人が踏み込める状態では無かったのですが、今回の観察コース設定のために役員で山を切り開いたのです。おかげでちょっぴり刺激的なコースとなりました。昔はこのような山深い場所まで畑が作られていたのです。

 

14時15分頃、刺激的な林道を越えると、突然ご覧のような杉林が現れました。どうです?感動的でしょ。鬱蒼とした林と直線的な植林のコントラスト。この杉林は下集落の下森宏さんが植林し、維持管理しているものです。淡路島ではこのような状態で個人が維持管理している杉林は少ないのではないでしょうか。集落の皆さんも日頃下森さんの杉林に入ることは無く、見事な管理状態に感動しておられました。同時にこのような農村資源を後の世代に残すことの大変さをあらためて痛感しておられました。

 

下森宏さんの杉林の付近は標高も高く、これより上部には田んぼも民家も無いため、ため池の状態がよくため池の動植物をたくさん観察することができました。

点在する小さなため池を観察しながら少しづつ里山を下って行きます。

予定通り午後3時過ぎには集会所に到着し、続いて生嶋史朗先生に下集落の生き物について講演していただきました。主に今回の観察でいけなかった箇所で見つけた植物についてお話いただきました。生嶋先生は今回の観察会に向けて数回下見をしておられ、その研究者として誠実さにあらためて頭がさがる思いです。この日の観察会に暑い中駆けつけていただいた皆様に感謝申し上げるとともに、学術的な裏付けをいただいた生嶋史朗先生にあらためて感謝いたします。

平成20年度生態観察会のお知らせ

鮎原下町内会の皆様方、また日頃から鮎原下集落の農村環境に興味を持っていただいている皆様、今年も「鮎原下農地水環境保全隊」の農村環境の向上や生態系保全の実践活動として、生態観察会を実施することになりました。

昨年は淡路島出身の生物写真家を集落にお迎えし、里山の爬虫両生類等の観察会を実施しましたが、本年度は洲本市由良の国立公園・成ケ島で貴重な植物等の保全活動をされている生嶋史朗(いくしましろう)先生をお招きし、下集落の畦道やため池周辺を歩きながら、アゼクサ・ツユクサを中心に里山の動植物の観察を行います。

鮎原下集落の自然環境を予備調査する生嶋史朗先生

生嶋史朗先生は、成ケ島においても日頃から観察会のガイドを務められ、そのわかりやすい説明と淡路島の自然環境に対する造詣の深さには定評があります。

7月の暑い時期ではありますが、夏休み前の休日を、淡路島の里山で過ごしませんか。たくさんの方々のご参加をお待ちしております。

日程 平成20年7月13日(日曜日)
時間 午後1時より午後4時(予定)
集合場所 鮎原下安心コミュニティプラザ(午後1時集合)
主催 鮎原下農地水環境保全隊  鮎原下子供会

講師 生嶋史朗(いくしましろう)先生
略歴 鹿児島大学 農学部卒業  元 南淡路農業改良普及センター 普及指導員
現在 成ケ島を美しくする会理事 昆虫養殖・販売業


※あくまでも予定であり当日変更される場合があります。

鮎原下安心コミュニティプラザに集合し、藤兵衛谷池方面へ向かいます。その後クワイ池の堤を通過し、途中山中の用水路を経由して木田勝巳様の炭焼き小屋を目指すコースです。

全行程約1.7kmのコースとなります。

長そで、長ズボン、軍手、汚れてもよい格好でお越し下さい。(雨天中止)

コスモスお花畑の刈取

本日、長い間下集落の皆さんや、県道を通行する方々の目を楽しませてくれた コスモスのお花畑を刈り取りました。 育て上げるのは手間が掛かりましたが、刈り取りはあっけないもの..  子供たちがお花畑の間を楽しそうに走り回っていた姿を思い出します。 みなさん。ありがとうございました。