平成20年度生態観察会レポート

2008年7月13日の日曜日鮎原下集落の第2回生態観察会が開催されました。

今回は国立公園成ヶ島を守る会理事で自然公園指導員の生嶋史朗先生をガイド役にお迎えし盛大に開催されました。

午後1時にスタートした観察会では、保全隊代表の木田一也(きだかずや)の挨拶の後、町内会長、洲本市役所農政課の巽様等の挨拶の後、簡単なコース説明を行い、いよいよフィールドに出る事になりました。

下集落の集会所(安心コミュニティプラザ)を13時20分頃出発、集会所から藤兵衛谷池方面に向かって集落内の農道を南下します。

歩き始めて間もなく生嶋先生が、道端のアゼクサに立ち止まり、植物の説明をしてくださいました。詳しい説明に子供よりも、大人の皆さんが目を輝かせながら説明に聞き入っておられます。このへんが生嶋先生のすばらしいところ。人懐っこい説明でどんどん参加者を引き付けていきます。

農道脇の水田に立ち寄って、田んぼの雑草の観察です。いろいろな種類の雑草を見つけ、「この田んぼは観察会向きですね」との先生の発言に、日頃から草取りに忙しい農家の皆さんの苦笑を誘っていました。

13時30分過ぎ、道端の植物の説明を聞きながら、最初のため池(藤兵衛谷池)に到着。ここでため池の生き物や植物の観察を行いました。子供たちのお目当てはアゼクサや田んぼの雑草よりも、ため池の生き物のようで先生が網ですくった生き物を身を乗り出して観察していました。

さあ、この当たりで天気に恵まれすぎたせいか、額のあたりにじっとりと汗が。熱中症対策のためにも参加者のみなさんに休憩と水分補給をしていただこうと、次の観察ポイントの「クワイ池」の堤に休憩所を用意しました。パラソルを何本か立て、冷たいお茶を用意した簡単な休憩所でしたが、役員の心配りに参加者のみなさんも喜んでくださいました。

しばらく休憩し、今回の観察コースの難所?とも言える山深い水路脇の道へ入っていきます。このような水路を管理するための道は昔はよく使われましたが、今はあまり歩くことがなく、大人の方は懐かしそうに、子供たちはちょっと緊張して山間にはいっていきました。この部分も役員総出で事前に観察しやすいように整備させていただきました。

ただ上の写真にも見えていますが、観察コースの畔草がきれいに刈られています。これはこの辺りの田んぼの所有者が草を刈っていただいたのですが、事前の調査ではこのあたりは貴重なアゼクサがあった部分なのですが役員の連絡不足できれいに刈り取られてしまったのです。ちょっと観察の材料が減ってしまって残念ではあるのですが、考えてみるとこのように保全管理が行き届いているからこそ貴重なアゼクサが生育するのです。もし管理されていなかったら人もはいりこめない林になるだけです。お百姓さんに感謝!感謝!!

 

午後2時前、今回の観察コースのハイライト?木田勝巳さんの炭焼き小屋に到着です。木田さんは約20年前から鮎原下集落のこの場所で炭焼きをしておられ、ウバメガシの炭や竹炭を販売しておられます。山深い場所にありますので人が入ることは少なく、ましてこの日は集落の子供たちや父兄おまけにケーブルテレビまでと静かな炭焼き小屋が急ににぎやかになりました。炭の焼き方などを丁寧にお話いただいた後、なんと子供たちに竹炭のおみやげまで用意してくださいました。木田さんありがとうございます。

 

炭焼き小屋の見学も終わり、今回の観察コースで一番標高の高い山道を通過します。この道、実は現在はまったく使われていませんでした。上の写真をみるとりっぱな林道のようですが、1週間前までは人が踏み込める状態では無かったのですが、今回の観察コース設定のために役員で山を切り開いたのです。おかげでちょっぴり刺激的なコースとなりました。昔はこのような山深い場所まで畑が作られていたのです。

 

14時15分頃、刺激的な林道を越えると、突然ご覧のような杉林が現れました。どうです?感動的でしょ。鬱蒼とした林と直線的な植林のコントラスト。この杉林は下集落の下森宏さんが植林し、維持管理しているものです。淡路島ではこのような状態で個人が維持管理している杉林は少ないのではないでしょうか。集落の皆さんも日頃下森さんの杉林に入ることは無く、見事な管理状態に感動しておられました。同時にこのような農村資源を後の世代に残すことの大変さをあらためて痛感しておられました。

 

下森宏さんの杉林の付近は標高も高く、これより上部には田んぼも民家も無いため、ため池の状態がよくため池の動植物をたくさん観察することができました。

点在する小さなため池を観察しながら少しづつ里山を下って行きます。

予定通り午後3時過ぎには集会所に到着し、続いて生嶋史朗先生に下集落の生き物について講演していただきました。主に今回の観察でいけなかった箇所で見つけた植物についてお話いただきました。生嶋先生は今回の観察会に向けて数回下見をしておられ、その研究者として誠実さにあらためて頭がさがる思いです。この日の観察会に暑い中駆けつけていただいた皆様に感謝申し上げるとともに、学術的な裏付けをいただいた生嶋史朗先生にあらためて感謝いたします。