カテゴリー別アーカイブ: 農の達人リレーインタビュー

No.3 炭焼きがエコ暮らしの救世主に

山間地の維持管理ではじめた炭焼きがエコ暮らしの救世主に..

木田勝巳さん
(昭和22年3月21日生まれ平成20年9月現在満61歳) 取材日2008年9月6日
木田さんは、元JA職員。JA勤務のかたわら父親と稲作・畜産・椎茸栽培等を営んでいた。昭和62年退職を機ににんにく栽培に挑戦したが、青森産や香川産のような立派なニンニクができずにやむなく断念。しばらくは従来からの酪農と和牛飼育に専念した。その頃はじめたのが山間地にあった自家の農地の維持管理のためにもなると考えた炭焼きであった。以来20年炭焼きを続けている。

先日は鮎原下農地水環境保全隊の生態観察会にご協力いただきましてありがとうございました。炭焼き小屋に子ども達が見学に来るようなことは今までございましたか?

問い合わせはありましたが、整備が不十分で実現しませんでした。

それでははじめての子供たちの見学だったわけですね。どんな印象を持ちましたか?

20年前に炭焼きを始めた当初は、変なことをしてるなというような目で見られていましたが、最近は炭の価値が見直されてきて各方面から注目されるようになりました。そんな中環境教育の観点からも小学生や幼稚園の皆さんに体験してもらえればよいなという気持ちがありましたので、その第1歩として今回の見学が実現しうれしく思っています。

さて炭焼きを始めた当初の話をお聞かせください。

はじめた当初は商品価値のある炭がなかなか焼けなかった。まさに失敗の連続でした。最初に取り組んだ炭は雑木中心でした。雑木を自分で切り出して自前の窯で焼きました。当時はあまりいい炭ではありませんでしたが、バーベキュー用として出荷できました。

最初から商品となったわけですね。

お蔭様で最初から捨てた炭はありません。炭焼きをはじめた当初から卸業者がついてくれたのも幸運でした。

当初、窯の作り方はどうして教わったのですか?

地元の年配の経験者に土窯の作り方を指導してもらいました。

木田さんの炭焼き小屋の土窯

販売ルートとしては卸販売が中心ですか?

卸販売も続けていますが、直販もしています。主に産直の物販所等で販売しています。

卸と直販の割合はどれ位ですか。

ほぼ50:50です。卸は雑木の炭が中心で、直販は竹炭やウバメガシの備長炭を中心に販売しています。

木田さんの炭がほしいと思ったらどこで買えますか?

主に淡路島各地の朝市で販売しています。それから洲本市内の健康食品の店「夢ひろば」でも購入できます。また南あわじ市にある淡路ファームパーク イングランドの丘の入口にある産直でも購入できます。

生産者の表示はどうされていますか?木田さんの個人名ですか?

三友商事というブランド名で販売しています。炭焼きをして販売を始めた当初三人の友人ではじめたからです。法人にはしていません。私は三友商事代表という立場です。

島外では販売されてないのですか?

量が足りないのでほとんどは島内で販売しています。島外の方には、時折わざわざ買いにきてくださった方にお分けする程度です。

朝市・産直等で購入できるのはどんな種類の炭ですか?

販売スペースの関係もあり、竹炭のみです。

平成元年頃から炭焼きと販売を始められたということで、ちょうど20年が経過しましたね。

当初はバーベキュー用といった使われ方が多かったのですが、10年が経過した頃から竹炭を始めました。丁度エコが注目され始めた頃です。

竹炭はどんな使われ方をしていますか?

水の浄化や空気の浄化という観点で使われています。部屋の中の化学物質を吸収できるということから、部屋のインテリアの一部としても使われています。商品の展開も水や空気の浄化を意識したものが多いです。

竹炭を焼こうとするとどれ位の竹と日数が必要ですか?

一窯に2トン車2台分の竹を入れて、炭収は僅か600kgほどです。炭を焼き始めて3日ほど火をいれます。その後空気を遮断して4日ほどかかります。焼きあがった炭の中には良品というか秀品もあれば割れたものもあります。秀品は原形のまま浄化用として販売し、形が崩れたものは粉砕して農地に還元したり、床下の調湿剤として使います。

床下の調湿剤といいますと?

割れた不良品などを粉砕して床下にいれます。炭は湿気が多いときは水分を吸ってくれて、乾燥している時は吸っている水分を放出してくれるんです。湿気の多い日本家屋に最適です。

面白い使い方ですね。どんなキッカケで利用されるようになったのですか?

最初は奈良県のお医者さんに使っていただきました。建坪100坪ほどの自宅を新築する際に、建物の基礎部分に直径1m、深さ1m50cmの円筒状の穴を25個ほど掘って、竹炭と備長炭を複合して投入しました。このお医者さんは電磁波も研究されている方で、調湿効果だけではなく有害な電磁波も遮断するということで炭を使いました。その後はクチコミで調湿剤として何度も床下に使われるようになりました。

床下調湿剤としてのコストは?

一坪に8リットルの袋10袋が必要です。1袋1000円前後で販売しているので、坪当たり1万円ほど必要になります。施工方法もコンクリートのベタ基礎に袋を並べるだけですので簡単です。

粉砕した炭を農地に還元するというのはどんな使い方ですか?

5月の田植え前に田んぼに鋤きこむのです。床下にいれる場合は粒が大きいが田んぼに入れる場合は粒を小さくします。

最近炭が高騰していると聞きますが?

それは原材料が少ないから。備長炭が特に不足している。一時は国内で消費される備長炭 の大半を中国に頼っていた。日本の業者が中国へ行って炭の焼き方を教えて逆輸入のような形で流通していたが、中国から日本への炭の輸出が禁止になってからは安価な備長炭が手に入らなくなった。

国内の備長炭の産地といえば?

和歌山。高知。北日本ではウバメガシが生育しない。ウバメガシでないと備長炭にはならない。

淡路島もウバメガシが多いですが最近はどうでしょう?

昔は多かったが、乱伐で禿山になってしまったところもあり水害のもとになったりして問題になった。竹の場合はたけのこが出て3年で切り出しできるまでになるが、ウバメガシの場合は芽が出てから20年はかかる。山林の保護のことも考えるとウバメガシがあるから切り出せばよいというものでもない。

さて最後に将来の夢をお聞きしたいと思います。

後継者もいないのであまり大きな夢は持っていません。竹林の荒廃を防ぐためにも、竹炭作りで竹の有効利用ができればよいなと思っています。

竹酢液も販売

増え続ける竹を集めて木田さんに焼いてもらうといった展開は可能ですか?

可能ですが竹炭の材料として重宝されるのは孟宗竹。鮎原下集落の竹林を見渡すと破竹と真竹が多いと思います。破竹と真竹は粉砕しか利用価値がない。孟宗竹は肉厚なので、水分の吸収量も多いので利用価値が高い。孟宗竹であれば運搬しやすいところから切り出して利用できます。 なにしろ、運搬や切り出しに人件費をかけることはできないのでアクセスを優先します。運搬しやすい場所であれば「孟宗竹が増えて困っているから切り出してほしい」と依頼いただいた場合、切り出した竹を原料として提供いただくだけでコストは一切かかりません。

実際、竹を切ってくれと言う依頼は多いのですか?

そこそこあるのですが、依頼があった分を全て切り出して炭焼きしても、それだけの炭を売りさばく販路が無いのです。販路が確保できれば焼ける。1ヶ月に一窯は可能です。

下集落全体で竹林の整備に乗り出そうという話になった時にはご協力願えますか?

地元のことだから協力しますよ。例えば焼いた炭を地元の相原川に伏せて水を浄化するなどすればよい。それが環境保全につながれば面白い。もちろん商品にもなりますよ。

炭焼きで食っていけますか?

それは無理やな(笑)。農業の傍ら、小遣い儲けくらいになればなぁと思っています。

No.2 鮮度と安全性にこだわって

高田和明さん 鮮度と安全性にこだわって。
さらには季節感をお客様に伝えたい

農の達人リレーインタビュー第2回は、下集落に暮らしながら洋菓子店を経営する高田和明さん。

大規模な担い手農家ではないが、農がわかる事業家という視点で、語っていただいた。

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プロフィール
高田和明さん(53歳 平成19年10月23日現在)は高校を卒業後一旦は淡路で就職。3年後には淡路島の外で苦労したほうがよいと島を出た。ケーキの材料屋を営む親戚をたよって修業に入ったのが奈良・学園前駅にあった子会社のケーキ屋。そこで修業を積んで3年後には川西市にあった店をまかされた。その後一度学園前の本店に戻った時は26歳。
27歳で結婚。結婚を機に淡路島に帰る。一旦はケーキ屋を離れるが、30歳の独立を機に再びケーキ屋の道に。以来20年以上ケーキ屋一筋。法人化や店舗拡大をすすめながら現在に至る。 有限会社 たかた 代表取締役 従業員13名

まずは今年度下集落の農会長のお勤めご苦労様です。社長業との両立は大変ではないですか?

まぁきついとこあるわなぁ(笑)うちの場合はサービス業だから土日が忙しい。そこへもってきて町内会関連の行事は土日にある。確かに両立は大変。我々は自営業だから時間の融通がつくがサラリーマンの場合農会長を務めるのは大変じゃないかな。

さて先日の従業員芋掘り大会。従業員の評判はどうですか?

はじめは嫌がる。でも自然と触れ合うことで材料を大事にするようになる。それから独特の仲間意識が生まれる。友達でもない、同僚でもない、独特の意識やな。女子従業員は3年くらいでやめていく子が多いが、やめても思い出してくれるはず。

芋掘りをきっかけに新しい商品を考えるような意識の変化が見えてくる。材料を見る目も違ってくる。

高田さんは常に農業にかかわりながら、洋菓子屋を続けておられますが、そのルーツはどこにありますか?

そもそもは、淡路島に帰ってきて商売をはじめた25年前のこと。ケーキと言えばイチゴが大事。ケーキというのはイチゴが代名詞。まずはいちごの調達に悩んだことから。

当時、ほとんど九州産(一部四国)のいちごを使っていたけど淡路に入ってきたときには痛んでいることも多かったし、おまけに農薬もたっぷりと使われていた。

なんとか新鮮で、無農薬のいちごを使ったケーキを作りたかったけど、商売をはじめた当初は時間もなくそのままだった。

10年くらいは辛抱していたが、人が手伝ってくれるようになって時間の余裕がでてきた。そこで思いついたのがイチゴを自分で作ったらどうやということ。自分が納得できる新鮮で無農薬のいちごを作ってお客様に安心してもらえばええやないかと。

大事な食材を自分で作ろうとしたわけですね

そう。水耕栽培とか高設栽培とかいちごの新しい栽培方法を見て回ったりした。それから北淡路農業改良普及センターに自分でいちごを栽培できないか相談にいった。

ところが相談の結果わかったことは、商売を続けながら、副業としてイチゴの栽培をするのは無理だということ。いちごはほんまに手間隙のかかる作物や。

あっさりと夢は打ち砕かれましたか?(笑)

それならせめて安心なイチゴを作る農家を紹介してくれと。

そこで紹介されたのが洲本市五色町堺のいちご農家山城克己さん。当時、山城さんがイチゴの栽培を始めてまだ2年目くらいやったと思う、こちらから頼むまでもなく「やりましょう」と言ってくれた。減農薬についても最初からこちらの要望に耳を傾けてくれた。今は化学農薬の残留量を国基準の10分の一に抑える「ひょうご安心ブランド」も取得されている。

もともとここ鮎原はイチゴの産地ですが、なぜ山城さんから仕入れるのですか?

長年イチゴを作ってきた人たちは頑固。従来通りの作り方しかしてくれない。大量生産のためにはある程度農薬も使われている。品種に関しても、主流は単価が高い大振りのイチゴ。うちらの場合はそんな大きなイチゴは使えない。

山城さんにお願いしているのはサイズは不揃いでよいからできるだけ自然な状態のイチゴを届けてくれということ。

もちろん地元のイチゴを使いたいが、なかなかこちらの希望を受け入れてもらえなかった。

山城さんのいちごは完全無農薬ですか?

苗の時に消毒してハウスに移した後はほとんど消毒しない。土壌で作っている作物であるかぎり土の中にも菌があるのでまったく無農薬というわけにはいかない。

たとえ自分で生産していなくても山城さんのいちごであれば安心ですね

目の届くところで栽培するのが一番。山城さんの生産現場は頻繁に見に行っている。生産状況は随時お客様に伝えるようにしている。少々値段は高くても安心で新鮮ないちごを使っていることをお客様にアピールしたい。

ただケーキの最盛期は山城さんのいちごだけでは間に合わず、九州産、四国産のいちごも使っているけどね。

生産者側にも意識の変革が求められますね?

長年農業をやってきた人に山代さんのような栽培をお願いしてもなかなかやってもらえない。

職人というのはへんこつなところがあって自分のやり方は変えられないもんや。我々も職人やから百姓さんの気持ちはわからんことはない。 「お前とこに売るイチゴはないんよ」と突き放すんじゃなく、少しでも我々の要望に耳を傾けて生産してくれればメリットもあるんや。

たとえば山城さんの場合規格外のクズが出ない。安心で鮮度がよければ大きくても小さくてもうちが引き取るんやからな。それもキロ単位で。小さなものはジャムにすればいい。元からのいちご農家はパック単位で売ろうとする。

山城さんの農業を応援しているわけですね。

うちが消費するだけでなく、淡路島外の知り合いのケーキ屋を紹介して出荷もしている。農業している人が困るのが量をとってもらえなかったり、逆にもっとほしいと言われること。

いちごは山城さんから、そこでさつまいもを自分の手で作ろうと?

自分で食材を調達する夢を捨てきれずに、手始めに始めたのがサツマイモ。あずきも作ろうとしたが失敗した。除草が大変や。

さつまいもの去年の生産量は170kg。今年はもう少し少なかったけれども、この時期をお客様は待ってくれている。3時頃の焼き上がりの時間に合わせて来てくれるお客様もいるほど。秋はイモのお菓子が主力と言えるまでになってきた。

イモを仕入れれば5kgで約3000円。自分で生産すれば苗1本15円から20円。少しの手間で生産できる。コスト上のメリットもある。

今後自己生産したい食材はありますか?

果樹に挑戦したい。ラフランスやみかんの木。時間がかかるかもしれないがやってみたい。手伝ってくれる人が必要やけど。山城さんに持ちかけてみたら「桃を作ってみましょうか?」と言うもんやから「マンゴー作ったらどないや」と構想を練っている(笑)  果樹は先になるかもしれないけど、実は麦の生産を検討している。

麦というと小麦ですか?

そう。小麦。我々洋菓子屋の原料の中で小麦は重要。そいつをなんとか自分で生産できないかと。

色々調べる中で問題点が出てきたのが、淡路島で小麦を作ることは何の問題もないけど、小麦を粉にする製粉の過程に問題があることがわかった。

生産は出来ても製麦所がもうなくなってしまっている。そこで下集落のJA職員下森啓司さんに、製麦の機械をいろいろ調べてもらっているとこや。製粉機の目途がたてば、来年からでも栽培してみたい。

洋菓子屋さんが小麦を自己生産する例はありますか?

おそらくケーキ屋は少ないと思う。パン屋はあると思う。大分県かどこかで主婦が中心になって、ジャムを生産しはじめて、次は自分たちで作った小麦でパンを焼こうと、製粉機を購入した話を聞いたことがある。主婦の発想でもそこまでやれるんやから我々に出来ないはずがない。(笑)

自分で生産することにこだわるのはどうしてでしょう?

自分の目の届くところで生産したものは安心やから。

鮮度と安心な食材にこだわるコンセプトがあれば仕事にもやりがいが出てくる。

なんのために仕事をしているのか。何かこだわってやることによって、自分だけでなく従業員も意識が違ってくるはず。

それと季節感を大事にしたいからや

季節感と言いますと?

我々百姓が挨拶する時、「今年はどないや?」「今年はあかなんだ。(出来がよくなかった)」と言葉を交わすよね。お客様にもそんな風に語りかけるような商売をしたい。

もう少し具体的に教えていただけますか?

日本は、年中イチゴがあって、キウイでもマンゴーでもどんなフルーツでも世界中のものが手に入る。そうではなしに農業には豊作・不作があるように、ケーキの味も作物の出来が反映してもよいと思う。それが季節感やと思う。

お客様に「今年は暑かったからイモの出来が悪かったわ」と話ができるようなケーキ作りができたらなと思う。

無農薬・減農薬に関する情報もどんどんお客さんに伝えていく。対話しながら我々農に携わるものの役目として農薬だけが悪者ではないことも伝えていきたい。

「たかたのケーキ」では他にどんな淡路の食材が使われていますか?

いちご、いちじく、ブルーベリー、かき、温州みかん、れもん、ぶどう等。 りんごとかマンゴーは淡路では無理かな。

 

ケーキはけっこう淡路ならではの食材が使われてますね

食材はブランドやからな。例えばうちが使い始めた淡路島北淡のイチジクなどは今は芦屋などのケーキ屋にも出荷されるようになった。ブランド化すれば観光農園の展開も可能になる。イチジク狩りも盛況で、けっこう利益もあがっていると聞く。

ブランド化で農家との共存するような道はありませんか?

今までの農業のやり方では利益の確保がたいへんや。中間業者のマージンが大きすぎる。もちろん農家自身の売り方もへたやけど。ブランドを確立すれば直販の道もひらけてくる。

言い方が悪いかもしれんが、農業は金儲けをせなあかん。農業は文化。やめたらあかん。合理化もよいが、ええもんを作って儲けなあかん。

ケーキ屋さんとしてのこだわりを教えてください。

とにかくいつも目新しいものを作ってきた。25年前から淡路でおいしいケーキといえば「たかた」と言われるように努力してきた。

今洋菓子といえばフランス菓子が主流。どこの店でも真似してやっている。神戸でも東京でも同じ。うちがやっているような昔ながらのショートケーキは泥臭い・田舎くさいイメージがあってほとんどやっていない。

ショートケーキは日本オリジナルの日本人のためのケーキ。ショートケーキはフランスにはない。今はやりのロールケーキももともと和菓子。

昔ながらのショートケーキにはまだまだ地元の食材を活かす余地がある。フランス菓子とは違う日本のケーキを追求していきたい。

おいしいケーキを作れば、芦屋からでも大阪からでも来てくれる。これからは洋菓子だけじゃなく、「淡路の味」をアピールして、淡路に人を呼びたい。

「淡路の味」って何でしょう?

農産物の話ではないが、淡路と言えば海の幸。ところがなかなか地元の人達でさえ淡路の地魚が味わえない。神戸の魚市場を経由して淡路に卸したものを買って食べていたりする。流通路がおかしくなってるんやな。

仲間の料理屋の話やけど、地元の漁師に地で獲れた鯵(アジ)を出しても喜ばない。「大間のマグロ」を出せば喜んで食べる。これは漁師が悪いんじゃなくて料理人の怠慢。家ではできないようないわしの料理とかアジの料理を工夫したら喜んで食べてくれるはず。

この料理屋に東京の放送局の記者が来たときに、なんとか淡路でないと食べれないものでもてなせないかと思案の末、自分で釣ってきたものを料理して出すことにした。これがいちばん喜んでもらえると気づいたんや。これは一例にすぎないけど、淡路の人は島の外から来てくれる人をもてなす努力が必要。淡路には海も山もあるんやから。

「淡路に人を呼ぶ」努力が必要ですね

まずは淡路にいろいろな人が来てほしいと願う人が増えないとだめ。地域の人の協力も必要。田舎をアピールせなあかん。今の時代はネットの力も必要やな。  例えば、農村に増えてきた空家。古い池をみせたり田んぼ見せたり、空家を利用するとそこをベースに面白いことができる。でもそれを実現するためには我々商売人だけではだめ。行政のバックアップがないと前にすすまない。空家になった一軒家を借りてコース料理でも出せるようになれば面白い。

最後に「たかたのケーキ」は淡路島に2店舗を展開中ですが、我々の下集落に店舗なんてことは考えられませんか?(笑)

おいしいものを作れば都会の人はどこまででも買いに来てくれるのはわかっているが、多店舗にするとすべての店を見られない。人口比率とか最低売り上げとか考えないといけないことがいろいろある。採算ベースを考えると二の足を踏む。まぁ。いっしょに考えていかんか。

長時間ありがとうございました。今後の展開が楽しみですね。

 

淡路たかたのケーキ屋 本店
〒656-2131 兵庫県淡路市志筑3266-1
営業時間 9:00~20:00 (喫茶コーナーは18:00まで)
定休日/水曜日 TEL 0799-62-4144

淡路たかたのケーキ屋 洲本店
〒656-0026 兵庫県洲本市栄町2-3
営業時間 10:00~19:30
定休日/水曜日 TEL 0799-23-1322

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No.1 環境農業への思いからエコファーマー・JGAP認証取得

さて第1回は木田和夫さん。エコファーマーとして環境にやさしい農業を実践する傍ら、産地直売所を立ち上げられるなど行動力も抜群。環境農業への思いは、ついに関西はじめてのJGAP協会指導員資格取得にまでも及ぶ。

木田和夫さんは今年60歳(2007年8月現在)。電気設備資材卸会社を3年前に早期退職。現在は認定農業者として農業に従事。この3年間にいちはやくエコファーマーの認定を受け,仲間と一緒に産直市場も立ち上げた。また最近は話題のJGAP(ジェイギャップ)の認定を受けるなど精力的に活動されている。

--16年9月に早期退職されて専業農家となった理由は何ですか?

農家の長男であるし、いつかは農業で身をたてたいと思っていました。またできるだけ早く地域に溶け込み、地域で生きて行きたいとも思っていました。幸いにも政府の農業改革が推進されていた時期とも重なり思い切って脱サラできました。 会社勤めの中で、会社オンリーではいけないと薄々感じていました。若いときは親に言われたことをやるだけであまり農業に面白みを感じませんでしたが、今は好奇心を持って農業に向き合っています。

--今は農業を楽しんでいるわけですね。

そう。楽しくてしかたがない。失敗しても再チャレンジすればいいという気持ちです。それに経験を積み重ねて、物事をきわめてエキスパートになれるという喜びもあります。

--退職して3年ということですが、どんな作物に取り組んでこられましたか?

1年目は主にレタス作りに取り組みました。私が会社勤めの間は家内が両親とレタス栽培をしてくれていたので、逆に家内に教えてもらう毎日でした。(笑) 今は栽培方法についても自分なりに工夫し、農薬・肥料・土の研究を重ねながら地元JAのレタス部会の役員をさせていただくまでになりました。

--木田さんは産直も立ち上げられていますね。立ち上げの経緯をお聞かせください。

農業で身を立てようと勉強するなかで、農業新聞等の情報から産地直売所に興味を持ちました。全国各地の実践例を目の当たりにし、自分でもやってみたくなり昨年仲間3人で産地直売所をたちあげました。

--直売所のPRをしてください

正式な名称は「ふるさと農産物直売所」です。現在約30名の会員がいます。会員は正会員と準会費で構成され、売上の一部を直売所に収めていただくシステムです。販売から二三日後には会員に売上額をフィードバックしています。

--産直は順調に見えますが

おかげさまで本年度の売り上げは今のところ去年の5割増しです。

--さてエコファーマーの認定を受けられた経緯をお聞きしたいのですが

脱サラして専業農家となった頃、地元農業委員の岩見倍夫さんより認定農業者へのお誘いを受けました。これから農業をやっていくなら環境保全型農業の認定農業者にならなければやっていけないよと。そこで普及所等にご相談をして手続きの方法等を教えていただき平成17年10月にエコファーマーの認定を兵庫県より受けました。

--まずは認定農業者となりその後エコファーマーをめざしたわけですね

  農業新聞を読んでいると、エコファーマー関連記事の出現頻度が高いんです。記事を追いかけるうち、自分でも環境や地球温暖化の問題などに興味を持ちました。これは自分もエコファーマーとなり実践していかなければならないなと考えました。

--エコファーマーの認定を受けるということはどんなことなのですか?

まず減農薬や化学肥料や農薬の低減に関する5年間の計画書類等を提出しなければなりません。書類審査を経て、「環境にやさしい農業にとりくむ農業者」であることを知事からお墨付きをいただくわけです。

--導入計画を実践していくわけですね。

形式的なものではなく、私自身環境に向けて努力しています。例えば、レタス栽培においてエコファーマーが実践すべき生産技術としては、化学肥料を低減するために有機質肥料や肥効調節型肥料の施用、あるいは化学農薬を低減するために雑草の抑制に役立つマルチ栽培や害虫防除の黄色灯やフェロモン剤を活用するなど、取り組むべき課題がたくさんあります。

  

--下集落にエコファーマーが拡がる機運はありますか?

現在集落内で営農組合を立ち上げておりますがエコファーマーの認定者は一人なのです。他に認定農業者のかたがエコの認定に向けて取り組もうとされています。一人でやるよりもまわりに広がってほしいと思います。例えばレタスの生産においても、長野県のレタス農家では、生産者団体全体でエコファーマーを取得するなどの例があります。環境のことを考えると範囲が広いほうがよいのです。

--集落や生産者団体にエコファーマーが広がりにくいのはどうしてでしょう

とにかくエコファーマーを実践するためにはハードルが高いのです。化学肥料をできるだけ使わない。かといって有機栽培は高くつく。農薬の使用量を低減すれば代替の対策をとらなければいけない。電気を使う、フェロモン剤、マルチを張るなど...費用の面で乗り越えなければならないハードルがいろいろあるのが原因でしょう。 その上、栽培履歴を日報につけなくてならない等、とにかく面倒くさいのです。外から見ると「自由にできない」農業に映るのかもしれません。

--それでもエコファーマーは広がってほしいのですね。

はい。仲間どうしの話題にもなるし地域の環境にも良いので今回の農地水環境保全事業のスタートにおいてもエコファーマーに取り組む場合二階建ての営農支援の追加助成がありました。何度か取り組む項目にいれることをすすめたのですが実現できませんでした。

--実際にエコファーマーのメリットは何でしょう

今のところ、直接的なメリットはあまりないですが地球環境や食の安全には貢献できるかと思います、できれば安全、安心なエコファーマーが生産した農産物が有利に販売できれば良いな~と思いますが消費者の認知が低いので難しいです。政府の支援ももっとお願いしたいと思います。

--生産物にエコファーマーのマークが使えるのですよね

でも産地直売所では使っていません。自分だけ貼るわけにはいかないし。それに社会的にはまだまだ認知されていないから。もちろんおいおい使っていきたいと思っていますが……。なにしろ説明が苦手だからなかなかエコファーマーをPRできない。(笑)

--主な販売ルートなど教えてください

JA、産直、直販(個人売り)飲食店、青果市場、仲買業者などあらゆるルートを活用しています。数値的にはレタスのウェートが大きいからJAの数字が大きくなります。産直の割合は売上としては少ないですよ。ほんのわずかです。

--産地直売所はそんなに儲からないというわけですか

会員のなかには家庭菜園的取り組みのかたもいるし、これが本業だという人もいる。順調に売上が伸びているし、淡路島の産直ではうまくいってるほうだと思う。やはり共同で運営すると難しい面もあることは事実です。将来は商品に農薬の履歴を読取る表示をしたり、商品補給をできるシステムづくりなど課題はいろいろあります。

--農場名は「木田ファーム」ですか?

まだまだ「木田ファーム」として商品を販売する機会は少ないです。これから直販で商品を売るときにこのブランドを使いたい。例えばメロンの直販に向けて準備しています。淡路島の旧一宮町では、ハウスメロンで成功しています。一個1500円から2000円の単価で販売されています。私も「木田ファームのメロン」を夢見てメロンの栽培をはじめたのですが、デジタル糖度計で計るがなかなか糖度が上がってくれない。(笑)今は栽培方法を試行錯誤している段階です。

--直販はブランド作りというわけですね

「木田ファームのメロン」をお待ちください(笑)まぁ。ブランド作りとまではいかなくても、例えば産直の仲間の中には、桃の直販に成功している人がいます。主にクチコミで広がり、宅配便を利用して全国に個人向けの販売をしています。 とにかく直販の割合を徐々に増やしていきたいと思っています。

--さてそろそろGAPの話をお聞かせください

 エコファーマーとくらべ、こちらはまだ歴史が浅く、日本国内で話題になりはじめてまだ2年程だと思います。JGAPの認定を受けるためには、農場の水質検査や肥料濃度を測定するなどひじょうに高度なデータが要求されます。

--エコファーマーどころではなさそうですね。(笑)

そうなんです。水質検査をやるのに、保健所も行きましたよ。土の検査の肥料濃度(ph)等は普及所で可能ですが。ほかにも測定項目がたくさんあります。残留農薬検査だけでも何十万とかかる。128項目の審査に合格してはじめて認定農場となるのです。

--こちらも認定マークがあるのですね。

GAPのマークはまだ流動的です。世界標準のEUREPGAP(ユーレップギャップ)と同等のJGAP(日本版)が世界基準に認められました。EUで使われているGAPのマークと日本のJGAPが制定したJGAPのマークがあります。JGAPのマークはまだ使えずに、世界共通のマークになるか検討中ということです。

--JGAP会員加入から1年経過しましたね

GAPはこれからです。外から見るとエコファーマーのほうが通りがよいです。今までかなり投資してきました。(笑)これも家族の理解があって実現したことです。もうやめようかと思ったことは何度もありましたが、これからの農業のためにはどうしても必要だと自分を奮い立たせてきました。

<<コラム>> 木田さんとJGAP
GAP とは「適正農業規範(Good AgriculturalPractices)」の略称。農業生産現場における安全性確保の具体的な対策として、世界的に普及しているルールです。そしてJGAPはこの日本版ともいうべきNPO法人です。またJGAPの理念を普及させるために認定指導員制度があり木田さんは今のところ関西初めての認定者。 JGAPの認証農場となれば、生産された農産物の安全性や品質を消費者にアピールすることができる。128項目の審査の後、是正項目をクリアーすれば晴れて認証農場となる。木田さんの場合、穀物と青果物の認証を得た。関西ではJGAP認証農場は少なく、先日読売新聞の全国版でも紹介されたほど。

--エコファーマーとGAPのつながりはどうとらえたらよいのでしょう

GAPは頂点 その枝分かれのひとつがエコファーマーだと思います。GAPがめざすところに向かいたい。

--エコファーマーからGAPへと、環境にやさしい農業への歩みは着実ですね。がんばってください。さて最後に農の達人として将来の夢をお聞かせください。

環境にやさしい農業がみんなに理解してもらえるように、できるだけのことをしていきたいと思います。 あと、「木田ファーム」の将来像としては、ちょうど立地が山の斜面になるので、ログハウスでも建てて、農道には木の柵を作ったりして、観光農園のようにしたいです。体験農園にも魅力があります。やりたいことはいっぱいあるけど命がいくらあってもたりません。(笑) それから下集落に対しては、農地水環境保全隊の活動にも協力しながら、農地やため池に昔ながらの生き物が蘇ればいいなと思います。子供の頃は近所の清流でモツ獲りもしたなぁ。きれいな自然を蘇らせて都会の人たちと交流ができる「ふるさと」であってほしいです。

--ありがとうございました。